僕と図書室とラノベ

たしか通っていた小学校の図書室で、僕はそこで本を読むことを覚えた気がする。僕が一年生になると同時に出来た新しい学校の新しい校舎で、中庭の見える二階に図書室があって、とても居心地のいい場所だったのを覚えている。図書館ではなく図書室なので蔵書数はたかが知れてはいるが、ファーブル昆虫記だとか恐竜のひみつだとかにゃんたんのゲームブックだとかウォーリーを探せだとかかいけつゾロリだとかズッコケ三人組だとか卑猥な言葉だけ蛍光マーカーで強調された辞書とか、おおよそガキの頃の僕が興味を惹かれるタイトルで溢れていた。

保育園のころは祖父だか祖母だか母親だかが買った100冊くらいの絵本セットに囲まれて育ったので読書をするきっかけはあったのだが、読み聞かされることに慣れてしまっていた。たしかそのとき好きだった絵本は『おしいれのぼうけん』『ふらいぱんじいさん』『すてきな三にんぐみ』『マドレーヌのいぬ』『はじめてのおつかい』『だるまちゃんとてんぐちゃん』『ぐりとぐら』他多数。しかしそれでも自分で文字を読むとなると話は別だった。

読書を始めたのは小学三年生のとき。ちょうど親友二人の引越しで一気になんかぽっかりした僕はたぶん図書室に遊び場を求めていたのかもしれないと今になって思う。親友二人がいなくなったことがあまりにショックだったのか、小学校の卒業アルバムの作文にもそのことを書いているくらいだ。まぁ、そんなこんなで本の世界にのめり込む僕、と言いたいところだったけど、とりあえず児童文学と呼ばれるものを読んでは見たものの僕はあまり活字に興味が沸かなかった。そのとき図書室で一番お気に入りだった本が「旅の絵本」というガキにしては渋すぎるチョイスだった。読書に飽きて家の仏壇にあった経本を勝手に持ち出して図書室で黙読するふりをしたりして上級生が「おいあいつ、お経読んどる!すっげ!」とか言ってる周りの反応に内心ニヤニヤするという遊びを…なんか自分でこうやって書くとマジでひねくれてるなぁ。まぁそんなこんなで中学生。

中学生の部活動。その同学年メンバーの中にガチヲタの姉を持つ弟であるところの僕の友人がいた。彼がその後の僕の人生を大きく左右してしまうファクターであったことは間違いないと思う。その友人は僕にスレイヤーズを、ライトノベルの存在を教えてくれた。中学一年生だから1996年頃か。それが僕が出会った初めての小説と呼べるものだったんじゃないかなと思う。

スレイヤーズを読み始めたころにちょうどテレ東でアニメもやっていて、たしかスレイヤーズNEXTだったと思うけど、そこで林原めぐみさんという声優を知って、彼女のラジオを深夜に聴いてといった具合にオタク街道を突き進むことになるのだけどそれはまた別のお話。

スレイヤーズと出会ってライトノベルといえば僕の中では富士見ファンタジア文庫だった。でかでかとした黒ゴシック体のタイトルに白抜きの控えめな表紙デザインが気に入っていた。『スクラップド・プリンセス』だとか『召喚教師リアルバウトハイスクール』だとかを読んでいた。それ以外のレーベルだと「みんなの賞金稼ぎ」とか。だけどどの作品も中途半端に追いかけるのをやめてしまった。スレイヤーズだけは最終巻「デモン・スレイヤーズ」まで読んだのだけど。

スレイヤーズが終わって今まで、ライトノベルは読もうと思わなかったし、それ以外の活字もあまり興味がなかった。興味があったのはゲーム、それも主にアドベンチャーとかビジュアルノベルとか言われるジャンルだったのだけど、だったらその興味の矛先はライトノベルに向けてもいいんじゃないだろうかと最近思い立った。だから先日読んだ『ある日、爆弾がおちてきて』は久しぶりに読んだ文庫本のライトノベル。数ヶ月前に西尾維新の『化物語』を読んだのだけどあれは残念ながら文庫本という形ではなかったのでなんとなく感覚が違っていた。

僕にとってのライトノベルの感覚は未だあの頃の富士見ファンタジア文庫で止まっている。