『とある飛空士への追憶』

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫 い)

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫 い)

「美姫を守って単機敵中翔破、1万2千キロ。やれるかね?」レヴァーム皇国の傭兵飛空士シャルルは、そのあまりに荒唐無稽な指令に我が耳を疑う。次期皇妃ファナは「光芒五里に及ぶ」美しさの少女。そのファナと自分のごとき流れ者が、ふたりきりで海上翔破の旅に出る!?―圧倒的攻撃力の敵国戦闘機群がシャルルとファナのちいさな複座式水上偵察機サンタ・クルスに襲いかかる!蒼天に積乱雲がたちのぼる夏の洋上にきらめいた、恋と空戦の物語。

面白かった。読後感も爽やか。気付いたら残りページを気にしつつドキドキしながら読んでたわ。

月並みで乱暴な形容だけど、天空の城ラピュタ紅の豚を足して二で割ったような作品、と説明したほうが手っ取り早い。季節は夏。青年と少女と恋と空戦。これで面白くならないわけがない。夏の海と空の間をプロペラ機が静かに進む。その情景だけでもうご飯三杯。空戦の描写も迫力と勢いがあり、敵の主力戦闘機のモチーフが「震電」だったり、さらに「左捻り込み」とくれば興奮せずにはいられなかった。

シャルルもファナも、それぞれの境遇を考えれば性根が腐っていてもおかしくないのに、二人とも本当に素直でいい子。結局腐ってたのは僕というオチ。