千円のたばこは中高生のセックスに似ている

「ぶっちゃけ、オナニーのほうが気持ちいいよね」

 こんなことを言うクラスメイトがいたら、そいつは間違いなく童貞かオナホマイスターだ。前者ならそれと悟られないよう笑いを堪え、後者なら後学のために校内イントラネットでオナホwikiを作成させることをオススメしたい。

 ガキのころ、俺は童貞でオナマイ見習いだったので、セックスはオナニーより界王拳換算で十倍くらいは気持ちいいんじゃないだろうかと妄想していた。残念ながらその期待は大きく裏切られたが、結果として三十分間二万五千円でフライトアテンダント風女性の滑走路になって離陸させるという過ちを覚えたので、今振り返って考えてみればあの時の魂が少しだけ救われた気がしている。

 さて、日本たばこ産業から発売になった「The Peace(ザ・ピース)」という20本入り1,000円の高級たばこのことだが、加護ちゃんの全盛期じゃなくて本当に良かったと神に感謝しながらひと箱だけ買ってみた。20本入り440円のショートピースの倍以上の値段だからそいつはさぞ旨いはずだろうと期待していたのだが、悲しいかなニコチン中毒者にその芳醇でコクのある香りとやらの違いがわかるはずもなかった。素材本来の良さを最大限に引き出している陰茎とか形容しているヤリチン中毒者がいないのと同じ理屈だ。

 あの時のセックスへの憧れは嗜好品に対するそれと似ている。セックスは決してオナニーの上位互換ではなく逆もまた然り。さりとて大人はお金という絶対的なものさしでそれを計ろうとするから「※個人の感想です」なんていうナンセンスな注釈が生まれてしまう。1本十万するブレンデッドウイスキーも1本千円の非貫通オナホールも個人の感想では星5つに変わりはない。

 だから、千円のたばことか中高生のセックスとか、そんな背伸びなんてするもんじゃない。バージニア葉100%とかバージン100%とか講釈を垂れる前にやるべきことがある。

 エロゲをしよう。それでだいたい世界は救われる。