その人の初商業コミックスは限りなく透明に近い真っ白な世界だった

時を遡ること6年前、2008年のTwitter界隈はUstreamに明け暮れていた。

2008年6月18日の深夜1時過ぎ、その日僕ら三人もやはりUstで好きなイラストレーターを語るというユルユルな生放送を配信していた。 各々が思い思いに持ち寄ってきたURLを貼りまくりskypeを通じて語り合った。そこで、参加者の一人から同郷の友人だよと教えてもらった同人作家が今回初の商業コミックスを出されたその人だった。

そしてそこからさらに遡ること1年前、2007年の俺界隈はヘッドホン娘の画像を探すことに明け暮れていた。2007年当時、ちょうどヘッドホン娘が注目され始めて2ちゃんのスレも賑わっていた。その少し前から何かに取り憑かれたようにオーバーイヤー型のヘッドホンをつけた笑っていない少女の絵を蒐集していた僕が出会ったのもまた、その人だった。

それから今日までその人のことは、ヘッドホン娘を描いてて友人の友人ということなら俺もまた友人だろうと勝手にそう思っていた。コミケコミティアにいく機会があればぜひその人の同人誌を手にとってたいしてファンでもないのに「大ファンです! 応援してます!」ってそう言おうと決めていたけれど、結局そう決意した翌年にはすでに妻帯者となった僕の身分では同人誌を買いにちょっくら東京まで行くなんてことは到底無理な話となってしまった。

そんなこんなで、現在。あの日語った多くのイラストレーターのサイトは更新停止やNot Foundになってしまったけれど、その人のサイトが健在なことはRSSリーダーが教えてくれていた。そしてその人の同人誌が商業コミックスになると知って、他人のことながらすごく嬉しい気持ちになって、その日のうちにamazonで予約してしまいました。

小説家の池澤夏樹の娘で、アニメ『マリア様がみてる』では島津由乃役を務めた声優の池澤春菜は、自身初の単行本『乙女の読書道』のあとがきに「人生初の一冊はその人を知る上での大きな指標だ」と書いている。その人の4年間が詰まった今回の単行本もおそらくはそういった類いの代物だろう。

僕にもそんなものがあればいいなと、この6年間を振り返りながら読みふけるのであります。

薄光スノウフレーク (百合姫コミックス)

薄光スノウフレーク (百合姫コミックス)