凛として出梅

毎年この季節になると嫉妬してしまう。

じめじめした梅雨の教室で、六月の陽射しを浴びて少しだけ焼けた肌を露出した夏服の少年少女たちは、一学期の終わりを気怠るそうに過ごしている。外を歩く人は誰もが薄着で、カフェではアイスコーヒーの注文が目立ってきて、ランダムに降ってくる雨にアスファルトが濡れて乾いて匂い立ち、街全体が瑞々しい解放感に包まれる。ネットではコミケの当落に一喜一憂する情報が飛び交い、オフラインに向けてお祭りに参加する算段を仲間同士で企てる。僕はそわそわしながら、そんな情景に憧憬し、結局、昨日と同じ日常を過ごす。夏が来るのを今か今かと待ちわびる、そんな世界に嫉妬する。