Ever17 -the out of infinity-

Ever17 -the out of infinity-  [恋愛ゲームセレクション]

Ever17 -the out of infinity- [恋愛ゲームセレクション]

近未来の設定の中くりひろげられるサスペンスアドベンチャー。海洋テーマパークに閉じ込められた7人の男女が危機を乗り越えていく。やがて解明される真実とは…。

アドベンチャーゲームの名作として各所で評価の高い作品。いつかはやろうと思っていてPC版が比較的安価だったので購入。数ヶ月の積み期間を経て、2010年8月19日にプレイ開始、8月28日に攻略完了。あるサイトのレビューで著しく低評価だったのでそんなはずはないだろうと思っていたが、その感想は自分で書いててもビックリのアンチ寄り。


※以下ネタバレ・見出しに関係のない夏休みの自由妄言


評価が高いから、という動機だけでゲームをプレイしてしまうのはあまりにもリスクの高い行為で、適正な期待値を超過した精神状態ではそこに妥当な感動を見出すことなどできるはずもない。しかしながら、そうした一方的なプレイヤーの理不尽な感情を全て飲み込んで昇華してしまう作品が「名作」ではないかとも思っている。

他人に「面白さ」を伝えることの難しさを痛感している。素晴らしい作品と出会ったならそれを誰かに伝えたくてウズウズするだろう。同じ感動を相手にして欲しいと願い、一緒に語り合いたいと願い、そしてその作品を『もっと評価されるべき』だと思うだろう。他人の感想や評価が無ければ僕の世界はいつまでたっても殺風景なままだろう。そうした僕ではない他人の視点こそが作品の魅力を引き出し、しかし同時に殺してしまう諸刃の剣なのである。

さて、前置きが長くなってしまったがEver17の感想。イマイチ、というのが僕の正直な気持ちで、多くの人が高評価している現状で辛辣な意見になってしまうのは心苦しい。基本的なノベルゲームのシステムを崩さず、それを巧みに利用したシナリオは素晴らしいと思うが、素晴らしいのはそのアイデアだけであって、中身があまりに薄っぺら過ぎる。退屈な序盤中盤の中に突然ねじり込まれる伏線をもう少し自然な形で説明できなかったのか。多くの人が「最後までやれ。話はそれからだ。」といっていた、その最後の展開が強引すぎてついていけない。次々と回収されていく伏線、氷解していく謎、そして驚愕の真実、その様々に思考を委ねる快感、そうして放心状態に陥るにはいろいろと足りない。まとめると、設定はよかったが序盤中盤の会話と終盤の展開で台無しにしてしまった作品。

僕の中でEver17と同じような位置付けのアドベンチャーゲームに『街』がある。ゲーム内容ではなく取り巻く環境が似ていて、どちらもネットの高評価がプレイの動機で、発売から随分と経過したころに初プレイしている。僕の中で『街』の感想もEver17と同じようにネットの高評価とは違ったものになってしまっている。

名作は世代を超える、ゲームもまた然りだとそう思ってきたけれど、どうやらゲームには賞味期限があるのかもしれない。「面白い」を僕の視点からみて過去に確定させた人、過去を含んだ現在で確定させようとする僕の視点、ちょうど武と少年を俯瞰してきたように、その歳月の違いが違和感と、そして感情の隔たりを生んでしまうのは必然だろう。

面白いコンピュータゲームとは人間の欲望を満たすシミュレーターである、という言葉を信じるのならば、ファミコンのグラフィックを見てチープだと思ってしまう人間の欲望はやはり、高いところから低いところへ流れていく水のようなものなのだろう。本来、評価もまたそのように流動的でなくてはならないのだが、連続した記憶を保有し、時間軸に囚われ、単一の視点しか持たない人類にはある一点における定性的な評価しか望めない。それこそブリックヴィンケルさんならば、あるいは適切な評価が可能なのかもしれない。