デジカメ

その日、午後のタイムラインでは新宿区在住で二十一歳の男性が新しいデジカメの購入を検討していた。そういえばここ最近、僕もそんなことを思案している。

おそらく初めてデジカメに触れたのは高校生のときで、それは学校の備品だった。そのカメラはフロッピーディスクドライブを装備していて、フロッピー一枚でなんと十枚の写真を撮ることが出来る画期的な製品であり、高度に発達したデジタル家電の日進月歩はシュールなギャグと見分けがつかない。

そして初めて自分自身のデジカメを手に入れたのは、これもきっと高校生のときで、それはオリンパスの「CAMEDIA C-840L」だった。今は亡き「Newtype.com」という雑誌の創刊記念の懸賞に応募したら見事当選していて当時飛び跳ねて喜んだことを覚えている。

そして初めて自分で買ったデジカメがパナソニックの「LUMIX DMC-FZ1」だった。近所のキタムラカメラでSDカードも一緒に買おうとしたらお金が足りなくて六万円ジャストにまけてもらった。改めて考えてみればデジタルカメラを買ったのは今のところこのFZ1だけである。

今現在メインで使っているカメラは「N905i」というケータイの付属カメラで、それでも画質も機能も十分だと思っている。Twitter携帯百景との連携にもちょうどよく、画素数も手頃でデータもコンパクトにバックアップ管理も単一ファイルで済んでいる。ガラケーを使い続ける限りきっと新しいデジタルカメラを買うことなんてないと思っていた。

しかしながらデジタル一眼レフカメラで撮影された動画を観たときにその考えは変わっていた。

最近、ニコニコ動画で車窓を撮影した動画や風景を微速度撮影した動画を観ることが多くなった。まさかネットに転がっている動画を鑑賞する日がくるとは思ってもみなかったが、ビールを飲みながら僕は、ただただその映像の美しさに酔いしれていた。

美しい映像は人を豊かにする気がしている。僕はマカーではないが、美しいデスクトップにもそんな効果があるのかもしれない。今すぐにでもデジイチとアップル製品を揃え、歩いて街へ出て、スティーブ・ジョブスの言うとおりだと連呼したいところだけれど、残念ながら先立つものはなかった。

嫁さんにデジイチが欲しいと打診すると意外にも、子どもが出来たらいいよという回答をもらった。幸いなことに僕は、先立つカメならもっていた。