よくわからないが面白い、同人STG「Hellsinker.」の魅力

※本稿は2008年に他所で公開した記事を修正して掲載しております。

HellSinker.(ヘルシンカー)」は個人サークル「RUMINANT'S WHIMPER(犬丼帝国)」ひらにょん氏製作の縦スクロール弾幕シューティングゲーム

 前作「らじおぞんで」では豊富なシステムと頭の悪い難易度でプレイヤーの前に立ち塞がり、完成度の高いグラフィックとサウンドにして、これが個人製作のソフトなのかと目を疑うほどの作品であったと思う。

 今作でもその持ち味は受け継がれ、美麗なグラフィックとクールなサウンド、難解なシステムに凶悪な難易度、説明する気のないパッケージと説明書、重厚な世界観・演出・ユーザーインターフェース、とどめに画面左右に所狭しと並べられたゲージやスコア表示の数々。ビデオゲームがユーザーフレンドリーな方へと流れていく中で、今作はその斜め下をいくユーザーランドリーといったところか。そんな我が道をゆくひらにょん氏が長い開発期間を経てようやく完成させた同人STG、それが「HellSinker.」である。

 さてこのゲーム、開始するといきなり難関が待ち受けている。本編の始め方がわからない、のである。シューティングでよくある「タイトル画面→モード選択→自機キャラ選択」なんていう易しいウィザードをこのゲームに求めてはいけない。設定オプションを任意に選択しながらどうやら始めるらしいことがわかるまでに5分を費やした。説明書を読んでいない事も手伝ってはいるが、同ジャンルの有名ソフト「東方風神録」これをプレイするだけならば初見2秒で開始なのにね。

 そうしてようやくゲーム本編が始まったと思ったらここからがまた試練の連続。左右に表示された無数のゲージやらスコアやらの意味が当然わからない。そもそも自機キャラの攻撃方法がわからない。被弾してもなぜか死なない、と思ったら死ぬ。なぜか弾を撃ってこない敵、と思ったら撃ちまくる。ゲーム序盤なのにエクステンド。アイテムの種類が豊富で状況がわからない。ゲーム開始後数分でわからない事だらけになってしまった。

「え? あれ? ……は!?」

 気付いたらそんな声を上げながらプレイしている。ファーストステージだというのに画面上は敵弾の嵐。どんどん被弾していく自機キャラによくわからない事象を機械音声が伝えている。そうして、よくわからないままゲームオーバー。

「えーと、なにこれ……超面白い」

 私が最初に「HellSinker.」をプレイし終えて抱いた感情は本当にそんな単純なものだった。そうしていつしか、1面もクリアできない難易度のゲームに私の胸は躍らされていた。

「よくわからない」が「面白い」

 私はこの作品を通してそんな言葉を考えた。

HellSinker.」は確かに全容を把握するにはあまりにも難解なゲームではあるが、だからこそ、それが面白いのである。シューティングゲームという名前のミステリ小説を読みすすめている感覚といえばわかりやすいだろうか。

 おそらく、私がファミリーコンピュータに熱中していた時代はそんな感覚だったのかもしれない。このゲームを通してあのときのビデオゲームに対するワクワク感をもう一度味わえたような、そんな気がするのである。しかしもちろん、ゲーム本編の素晴らしい内容があってのものであることを付け加えておく。

 もしもこのくだらないテキストを読んで少しでもこのゲームに興味が出てきたらぜひ体験版をやってみてください。もちろん説明書は読まずにね。
http://sanagimaru.nobody.jp/c72.html

 それからニコニコ動画に素晴らしく楽しい動画があります。こちらも合わせてオススメしておきますね。


 参考URL:http://www.hellsinker.net/