『火花』と『リンガフランカ』
餅は餅屋という言葉があるけれど、読書好きのお笑い芸人が書いたお笑い芸人が主役の小説と、お笑い好きの漫画家が描いたお笑い芸人が主役の漫画、はたしてどちらが餅屋なのかと問われれば、やはり後者になるのだろうか。
TM NETWORKの木根尚登さんがテレビのトークバラエティ番組に出演した際、共演していたお笑い芸人コンビクマムシのヒット曲『あったかいんだからぁ♪』についてコメントを求められ「今は(いい意味で)誰でも作曲できる時代だから、どんどん発表したほうがいい」ということを言っていた。
俳優の高倉健さんがドキュメンタリー番組に出演した際、プロフェッショナルとはと問われ、難しいねと前置きしたうえで「生業だと思いますね」と答えていて、私はそのけっしてトートロジーになっていない言霊に胸を打たれたのである。
火花とリンガフランカはどちらも若手お笑い芸人と漫才をネタにした作品であるが、その内容はまったく陰と陽に分かれている。舞台から見える世界と、客席から見える世界、どちらも"だからこそ"の作品なのだ。
生まれながらにして餅好きになるわけでも、生まれながらにして餅屋になるわけでもない。餅屋好きと餅屋、その情熱が生み出すはどちらも餅であるのなら、両方美味しくいただきたいものである。
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