今日から始める「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」

※本稿は2010年に他所で公開した記事を修正して掲載しております。

この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」(以下、YU-NO)は1996年にエルフから発売されたPC-98用のアドベンチャーゲームです。翌1997年にセガサターン(以下、サターン)に移植され、2000年にはWindows版が「エルフ大人の缶詰」として発売されました。YU-NOは発売から十数年たった今でも日本AVG史上に燦然と輝く金字塔として評価され、AVGファンの間でも語り草になっている作品です。[要出典]

 今回はそんなYU-NOとの出会いと、そして今からプレイしてみようかと思ってる方へ向けたメモを残したいと思います。

 時を遡ること1997年。当時の私はゲーム・アニメ・ラノベ・深夜のアニラジと、オタク街道を爆進する文字通りの中2でした。そんな日々の中学生日記の中でサターンという家庭用ゲーム機と運命の出会いを果たすのですが、それはまた別のお話。さて、サターンを手に入れた私は何のソフトを買うかで迷います。季節はクリスマス。私は欲しいソフトが決まらぬまま母親とデパートに出かけました。下関のデパートといえば今も昔もシーモールです。今は亡き三階のアサヒトーイ、そのショーケースに陳列されていたのがセガサターン版「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」でした。パッケージ絵は鮮やかな白を背景に女の子が座ってこちらを見ているだけのシンプルなもの。パッケ裏が確認できないので何のゲームかまったくわかりません。そんなとき「年齢制限(推奨年齢18才以上)」の黄色のマークとエルフのロゴが目に留まりました。

(え?もしかしてこれエロいの?)

 思春期の男の子にとってエロは剣よりも強しです。
 次の瞬間には「これください!」と鼻息を荒くした私がそこにはいました。

 これが私とYU-NOとの出会いでした。感動も何もないただのエロ話です。ひとつ弁明させて頂くなら、当時の私はいわゆるギャルゲーと呼ばれるジャンルに嫌悪感を抱いていましたし、ときメモをプレイする柔道部の先輩を軽蔑していましたし、ゲームにエロとか、ゲームで恋愛とか馬鹿かよと思うようなピュアな先入観を持った中学生でした。そんな私がエロ目的で新品のゲームソフトを買ってくれと母親に懇願するのですからエロはやっぱり正義なんです。

 さて、実際にYU-NOを家族が寝静まった深夜にこっそりとプレイしてみると「私は本当に馬鹿でした!!!エロがあるとかないとか関係ないのです!!!」と勃起しながら絶叫したくなるような内容で、それはもう素晴らしいアドベンチャーゲームでした。笑われるかもしれませんが、サターンとYU-NOの存在は私にとって人生のターニングポイントといっても決して大袈裟な表現ではないでしょう。

 そんなYU-NOをぜひ皆さんプレイしてみてくださいと勧めたいのですが、今となってはPC-98版・サターン版・Windows版、そのどれもが入手困難です。


PC-98
 オリジナル版です。実機でのプレイが普通の人には絶望的です。それなりのお金を出せばハードと音源ボードを揃えることは可能ですがWindowsユーザーには敷居が高いと思います。またPC98エミュでという話でも近頃はフロッピーディスクドライブのついていないパソコンも多いです。ソフトの相場はFD版・CD-ROM版ともに1k〜3kといったところでしょうか。また、スペシャルディスクという追加シナリオが入ったFDもあります。

・サターン版
 各所で見かけます。BGMの音色や性描写、キャラボイスなどの違いがあります。Amazonの中古価格ではサターンの名作デビルサマナーソウルハッカーズのおよそ3,800倍という超プレミア価格です。要するに3,800円です。相場はこちらも1k〜3kあたりだと思います。

Windows
「エルフ大人の缶詰」に収録されています。エルフ会員向けに「elf classic」として廉価版の発売もありました。WindowsPCでそのままプレイ出来ますが、一部イベントの削除、一部の文書に伏字などの変更があります。相場は5k〜といったところでしょうか。


 本当のことをいえば「1996年の時間軸と記憶軸でPC-98版を予約してプレイ」というのが最良の案だと思いますが2010年現在では非現実的な方法です。そんなわけで、ある程度入手難度が低くキャラクターボイスもついていてプレイしやすいサターン版YU-NOを前提に話を進めたいと思います。

 サターン版のYU-NOはサターンで動きます。当たり前の話ですが、YU-NO買ってきてサターンも買ってきてついでにシャトルマウスもとなるとそれなりの出費ですし、置き場所にも困りますし、なにより押し入れから出すのがめんどくさいです。そこで「SSF」を使います。

SSF」はWindows上で動作するセガサターンの国産エミュレータです。作者が「PC上でサターンというハードを完全再現するのが最終目標」と謳うように実機を忠実に再現した描画で完成度の高いエミュです。そのため推奨スペックも高いですが、YU-NOのようなADVなら動作速度も問題ないと思います。SSFは扱い易いエミュでソフトを起動してサターンのCD-ROMをドライブに入れればほぼ動作します。BIOSも不要ですし、ディスクのイメージ化も必要ありません。しかし、YU-NOはディスク3枚の仕様のためディスク入れ替えがめんどうな場合はイメージ化するといいでしょう。

 YU-NOをSSFでプレイするためのフローチャートとしては

1.サターン版YU-NOを入手する
2.SSFをインストールする
3.ディスク3枚をイメージ化する
4.イメージをマウントしてSSFを起動してレッツプレイ
5.うまくいかなければサターン本体でレッツプレイ

 といったところでしょうか。

 ゲーム本編とは別にYU-NOの世界を楽しむのにオススメなのがサントラCDと解説本です。サントラはPC-98版とサターン版の二種類がありますが、PC-98版は非売品です。サターン版は少し前までエルフのサイトから通販で買えたのですが今は取り扱いがないようです。どちらも中古相場はそれほど高くはありません。解説本は辰巳出版から「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO完全ガイド」という名前で出版されています。こちらは非常に安価に中古本を買うことができます。内容は世界設定・キャラ紹介・原画・ゲーム攻略フローチャート・製作者インタビューとオーソドックスな構成です。攻略本という性質上、重大なネタバレが多く、本末転倒になってしまいますがプレイ後に見ることを強くオススメします。ただ、ゲームを進めていく上でいくら試行錯誤してもどうしても行き詰まる箇所が出てくると思います。その場合は完全ガイドを1ページ目から順番にゆっくり見ていけばネタバレが極力少なくなる構成になっています。

 ゲームクリア後にもっと踏み込んだ考察を楽しみたい場合は「You Know?」というサイトがオススメです。ここではYU-NOに関する様々な議論や論文を読むことが出来ます。また「相補性とガイア理論」という古い2chの過去ログがあります。ここではYU-NOシナリオライター菅野ひろゆき氏がゲームに用いた理論を「エクソダスギルティー」など別の作品と絡めて多角的に窺い知ることが出来ます。

 最後に。私はカツ丼が大好きですが、あなたもそうであるとは限りません。コンテンツは日々たくさん消費されていくもので、技術は日進月歩していくもので、どんなに素晴らしいものでも「旬」を逃せば評価や感動も変わってきてしまいます。そしていい思い出や体験はどんどん美化されていくもので、大人の「昔はよかった」という言葉に子供は辟易します。能動的にやったこと、受動的にやらされたこと、最初から知っていたこと、あとから知らされたこと、ちょうど仲間との飲み会に遅れて出席したときのなんとも言えない居心地の悪さのようなあの感じ。しかしながら、そういったものを補って余りあるアドベンチャーゲームが、プレイ後にとことん酔わせてくれる作品が「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」であると私は信じて疑いません。