菅野ひろゆき氏の実兄による考察

稀代のゲームデザイナーが夭逝して早一年が過ぎた頃、氏の功績を辿る作品集である『菅野ひろゆきメモリアル Device to the skies』が発売された。 DESIREやEVE、YU-NOといった剣乃三部作が収録されていないところなどはなるほど菅野ひろゆきメモリアルの名に相応しい。 僕は『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』の大ファンではあるが、決して近年のアーベルには肯定的に接してこなかったので、メモリアルと言われてもピンとくることが出来ないままでいる。 エクソダスギルティーや探偵紳士DASHの内容に不満を抱え、梅本竜氏との再度のコラボレーションを待ち望んでいたのだが、結局その儚い夢はたったの一年で粉々に散ってしまった。

先日たまたま購入したテックジャイアンに追悼記事が掲載されていた。その中のたったの1ページではあったが、現アーベル代表で菅野ひろゆき氏の実兄である菅野洋紀氏のインタビューが含まれていて、 その内容が非常に興味深いものであったため、一部をここに抜粋し、心に留めておこうと思う。

彼はゲームを作る時、システムから組んで、それにどうやっておもしろいストーリーを組み込んでいくかを考えるんですよ。 もちろん大まかな話は決まっていますが、その肉付けをシステムから遡るやり方をしていたので、すごく"ゲームらしいな"って僕は感じていました。 彼は「自分がやっているのは小説でもないし映画でもないしアニメでもない。ゲームなんだ」とよく言っていましたね。 そういうこだわりが、彼の傑出していたところなんじゃないかな。

奈須きのこ田中ロミオ元長柾木瀬戸口廉也、丸谷秀人、虚淵玄、以下あなたの好きなエロゲシナリオライターが続いていくのだが、いずれも有名で人気のシナリオライターであり、彼らは数多くの名作を生み出してきた。しかしながら、結局彼らはシナリオライターであり、ゲームデザイナーやプログラマーではないということが重要な部分である。現代のアダルトゲームの主流ジャンルはアドベンチャーであるが、ビジュアルノベルと呼ばれる紙芝居ゲームが大半を占め、それが目指しているものは面白いアダルトゲームではなく、狭義の意味での(シナリオが)面白いゲームである。蛭田昌人氏が去り、菅野ひろゆき氏がいなくなってしまった分野をアリスソフトだけで引っ張っていくにはそろそろ限界なのではないだろうか。いやしかし萌えゲーなんてものにエロの必然性とゲーム性を求めている時点で老害ゲーマーの言い分であり、エロゲーとはもはやポロリもあるビジュアルノベルのことと同義でいいのかもしれない。